学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅳ(構造) 問15
問題・正答・学習用解説
問題
鉄骨構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
筋かいは骨組の中に斜めに入れ、地震などの水平力を主に引張り・圧縮で受ける部材です。有効細長比は、座屈長さを断面二次半径で割った値です。は断面の曲がりにくさを大きさとして表す長さで、が大きいほど細長く、圧縮で横へ曲がる座屈が生じやすくなります。
(2)は大小関係が逆です。細長比20程度の短い筋かいは、80程度の中程度の筋かいに比べ、一般に塑性変形性能が高くなります。短い部材では圧縮力が大きくなるまで全体座屈しにくく、断面全体が降伏して伸び縮みする働きを利用しやすいためです。中程度の部材では座屈で中央が曲がり、そこに変形が集中して、繰返し時の耐力低下が大きくなりやすくなります。
ただし、短ければ断面形状や接合部を無視してよいわけではありません。薄い板部分だけが折れる局部座屈や端部破断が先に起これば、期待する粘りは得られません。本問は同程度の条件で、通常の筋かいの全体座屈と塑性変形の傾向を比較しています。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)ラーメンは柱と梁を曲げの力が伝わるようにつないだ骨組です。階全体の横移動を止めない場合、梁を硬くして柱端の回転を抑えても、骨組全体が横へずれる座屈形を防ぎ切れません。そのため、柱の座屈長さを節点間距離より小さくできないという記述は適切です。筋かいや壁などで横移動を拘束する場合とは条件が違います。端の回転拘束と、節点そのものの横移動拘束を分けてください。
選択肢2
(2)細長比20程度の短い筋かいの方が、一般に塑性変形性能は高く、記述は逆です。圧縮で早く横へ折れ曲がると、その後に同じ力を保って縮む能力が落ちやすくなります。短い筋かいは全体座屈しにくいため、材料が降伏しながら力を負担する働きを利用しやすくなります。この比較を、極端に薄い断面や弱い接合部にも無条件で当てはめないことが重要です。局部座屈や破断は別に確認します。
選択肢3
(3)限界細長比は、材料の降伏の影響が大きい領域と、主に弾性座屈で決まる領域の境目です。SN400Bの限界細長比以上なら、より高強度のSN490Bでも弾性座屈の領域になります。この領域の座屈応力度はに対応し、強度ではなくヤング係数と細長比で決まります。両鋼種のはほぼ同じなので、同一断面・同じ支持条件なら許容圧縮応力度は変わりません。
選択肢4
(4)降伏比は、降伏点を引張強さで割った比です。降伏点は元へ戻らない伸びが増え始める目安、引張強さは引張試験で達する最大の応力度です。降伏比が小さいと、降伏後も応力度を増しながら変形できる余裕を取りやすく、梁の塑性変形性能に有利です。ただし降伏比だけで梁の粘りが保証されるわけではなく、横座屈、局部座屈、溶接部の破断を防ぐことも併せて必要です。
周辺知識
鉄骨の圧縮部材では、材料の強さを使い切る前に座屈するかが重要です。短い鋼棒を押すと、断面に大きい圧縮応力度が生じてから変形します。一方、同じ断面でも長い鋼棒なら、比較的小さい力で横へ曲がります。強い鋼材へ替えるだけでは、後者の曲がりやすさを改善できません。
座屈長さは実際の部材長と同じとは限りません。端の回転や横移動がどの程度止められるかによって、同じ座屈荷重となる両端ピン支持の棒の長さに置き換えたものです。断面二次半径のは断面二次モーメント、は断面積です。材料を断面中心から離して配置すると、同じ断面積でもを大きくできる場合があります。
大地震では引張りと圧縮が交互に作用します。筋かいは引張りだけ強ければよいのではなく、一度圧縮で曲がった後の力の戻り方も問題です。また、梁では降伏後の変形を使えるよう、圧縮側の薄い板や梁全体が横へ逃げるのを抑えます。全体座屈と局部座屈を区別して学ぶと整理できます。