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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅳ(構造) 問10

問題・正答・学習用解説

問題

木造軸組工法による地上2階建ての既存建築物の耐震性を向上させる方法として、一般に、最も効果の低いものは、次のうちどれか。

選択肢

  1. (1)
    既存の布基礎が無筋コンクリート造であったので、布基礎の外部側面に接着系のあと施工アンカーによる差し筋を行い、新たに鉄筋コンクリート造の基礎を増し打ちした。
  2. (2)
    基礎に不同沈下がみられたので、1階の床組に火打ち材を入れ、1階の床組の水平剛性を高めた。
  3. (3)
    1階と2階の耐力壁の位置がずれて設置されていたので、2階の床組の下地の構造用合板を梁及び桁に直張りして、2階の床組の水平剛性を高めた。
  4. (4)
    屋根葺き材が日本瓦であったので、住宅屋根用化粧スレートに葺き替えて、屋根を軽量化した。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

不同沈下に対して、1階床へ火打ち材を入れる方法が最も効果の低い組合せです。不同沈下は、基礎の各位置で沈む量が異なり、建物が傾いたり部材に余分な変形が生じたりする現象です。火打ち材は床組の隅へ斜めに入れ、床を水平面内で変形しにくくする部材で、地盤や基礎の鉛直支持を直接改善するものではありません。
床の四角形が平行四辺形になる変形には、火打ちで三角形を作ることが有効です。しかし基礎の一角が下がる原因が軟弱地盤、基礎の損傷、支持の不均衡などにある場合、床を水平面内で硬くしても、その原因は残ります。まず沈下の原因と進行性を調べ、必要に応じて地盤や基礎の補強等を検討する必要があります。
他の選択肢は弱点と対策が対応しています。無筋の基礎にRCを増し打ちして一体化する方法は基礎の耐力・連続性を改善し、上下階の壁がずれる場合の2階床補強は水平力の受渡しを改善します。屋根の軽量化は地震で動かされる質量を減らします。補強の名称だけでなく、その部材がどの方向の変形や力へ効くのかを対応させることが重要です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)無筋コンクリート基礎は引張りへの抵抗が乏しく、ひび割れで連続性が失われやすい場合があります。あと施工アンカー等で既存部と新設RC基礎を適切につなぎ、増し打ちする方法は改善に有効です。ただし既存コンクリートの健全性、アンカーの定着、配筋、地盤支持等を確認します。新しい基礎をただ横に造るだけでは一体として働きません。既存の柱・土台から入る力を、新設部も受け持てる接合が性能の前提です。

選択肢2

(2)火打ち材は床の水平面内の変形を抑える部材で、不同沈下を起こす地盤や基礎の鉛直方向の支持状態を直接直しません。従って示された不具合に対する対策として最も効果が低くなります。床の水平剛性を高める効果自体がないという意味ではありません。沈下の原因を調べず床だけを硬くすると、基礎の変位が残ったまま別の部材へ力が移る場合もあります。補強する場所と、解決したい変形の方向を一致させることが必要です。

選択肢3

(3)2階の耐力壁から降りてくる水平力を、位置のずれた1階の壁へ渡すには、2階床が面内のせん断等を負担して力を横へ移す必要があります。構造用合板を梁・桁へ所定の方法で直張りし、床の水平剛性を高める補強は有効です。板を置くだけでなく、釘等の留付けと梁・桁の接合が必要です。上下の壁を一続きの力の経路として捉え、その間をつなぐ床に必要な強度・剛性があることを確認します。

選択肢4

(4)重い瓦屋根を軽い葺き材へ替えると、地震で動かされる建物上部の質量が減り、慣性力と転倒させる作用を小さくする効果があります。従って耐震性の改善に有効です。ただし軽量化だけで全ての壁量不足や接合部の不良が解決するとは限らず、葺替え後の荷重と構造を再確認します。また新しい屋根材自体の耐風固定や下地の健全性も必要です。部材を強くする方法に加えて、作用する力を減らす方法があることを理解します。

周辺知識

耐震改修では、地盤・基礎、柱梁、耐力壁、床・屋根、接合部を順に調べ、どこに弱点があるかを把握します。各対策は異なる働きを持ち、材料を増やすことが全ての不具合に効くわけではありません。
床の面内剛性は、離れた耐力壁を一緒に働かせ、水平力を受け渡すために重要です。火打ちや面材で改善できます。一方、地盤や基礎の不同沈下は鉛直方向の支持の問題で、原因となる層や損傷を調べる必要があります。水平な板としての硬さと、下から支える地盤の性能は別です。
基礎の増し打ちは新旧の一体化、床補強は上下階の力の伝達、屋根軽量化は地震時の質量低減が主な目的です。それぞれ有効に働く前提と、他の部分に与える影響を確認します。弱点の診断、原因と力の経路の把握、対応する対策の選択、改修後全体の確認という順で考えると、補強方法を単なる一覧の暗記ではなく理解して選べます。