学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅳ(構造) 問1
問題・正答・学習用解説
問題
図-1のように、脚部で固定された柱の頂部に鉛直荷重N及び水平荷重Qが作用している。柱の断面形状は図-2に示すとおりであり、N及びQは断面の図心に作用しているものとする。柱脚部断面の垂直応力度分布が図-3のような全塑性状態に達している場合のNとQとの組合せとして、正しいものは、次のうちどれか。ただし、柱は等質等断面とし、降伏応力度はとする。
| 鉛直荷重 | 水平荷重 | |
|---|---|---|
| 1. | ||
| 2. | ||
| 3. | ||
| 4. |
選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
図-3の応力度に、実際に材料がある断面の面積を掛けて、力とモーメントを求めます。断面は左右の縦部分が各、中央の横部分がで、全体はです。外接するの長方形全体を材料とみなしてはいけません。
左端からaの範囲、つまり左の縦部分が引張り、残る中央と右のが圧縮です。全塑性状態なので応力度の絶対値はどちらも。圧縮の合力から引張りを引き、です。
曲げは断面の図心回りで求めます。中央の横部分の合力は図心を通るためモーメント0、左右の縦部分の図心は全体の図心からそれぞれ離れています。左の引張りと右の圧縮は同じ向きに曲げるので、次のとおりです。
外力のは図心に作用するため曲げを作らず、水平力Qが高さhの腕でを作ります。従ってとなり、両方が一致する(1)が正解です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)圧縮部分と引張部分の差にを掛けると、軸圧縮力はです。曲げは左右の縦部分の力と図心までの距離を掛けて加え、になります。これを荷重点の高さhで割った値がQなので、組合せは一致します。中央横部分の圧縮力は図心を通るため軸力には加わりますが、図心回りの曲げへは加わりません。力の合計と、腕を掛けたモーメントの合計を区別します。
選択肢2
(2)は正しいですが、Qが正しい値の2倍です。左右の縦部分が作るモーメントは、各
で、二つを合計して9です。この合計にさらに2を掛ける必要はありません。全断面圧縮の状態から左の応力を反転させる別の計算法なら、変化量がになることを使いますが、それは左右の寄与を直接足す方法に追加する係数ではありません。二つの解法を重ねて二重計上しないようにします。
選択肢3
(3)Qは正しい値ですが、はではなくです。軸力は圧縮と引張りを符号付きで合計するため、圧縮から引張りを差し引きます。図-3の横幅だけの差や、全断面積の半分を使う計算ではありません。各位置で断面の高さが異なるので、応力度分布と材料の存在範囲を重ね、左縦材、中央横材、右縦材という面積に分けて求める必要があります。
選択肢4
(4)とQがともに正しい値の2倍になっています。軸力はを係数とする圧縮力、曲げはを係数とするモーメントです。引張りと圧縮は軸力では打ち消し合いますが、図心の反対側で作用するため曲げでは同じ向きに加わります。この符号と腕の違いを整理する必要があります。最後にQを求める際も、すでに求めた断面モーメントをhで割るだけで、もう一組の力があるとして2倍にはしません。
周辺知識
弾性範囲の曲げでは応力度が断面内で直線的に分布しますが、全塑性状態では引張側と圧縮側の材料がそれぞれ降伏応力度へ達します。したがって最大値だけを使うの弾性式ではなく、各部分の力を合計して軸力と曲げを求めます。
軸力が0の純曲げなら、引張りと圧縮の合力が等しくなります。本問では圧縮面積が大きいため、差が外力に対応します。応力の符号が切り替わる位置は、軸力があるため断面図心と一致しません。図心と、引張・圧縮の境界を同じものとして扱わないことが重要です。
各部分の合力は、その部分の面積に一様な応力度を掛け、面積の図心に作用すると考えられます。単位も確認すると、はで力、はでモーメントです。さらにhで割れば力Qになります。応力図、断面図、外力図の三つをつなげて、内部の力が外から加わる荷重とつり合うことを確かめます。