学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問8
問題・正答・学習用解説
問題
色彩に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。明所視、つまり十分明るい場所での視覚では、同じ放射エネルギーなら赤より緑の光を強く感じるのが一般的です。目は光のエネルギーを波長によらず同じように数える測定器ではありません。波長ごとの感じやすさを比視感度といい、標準的な明所視の比視感度は波長555 nm付近の黄緑で最大になります。
例えば黄緑と赤の光が、同じ1 Wの放射エネルギーを運んでいても、人の目の感度で重み付けした光束は同じになりません。標準比視感度が1となる555 nm付近に対し、赤側の650 nmでは約0.1なので、同じ放射パワーでも視覚に対応する量には大きな差が生じます。赤が警告灯などで目立つことは、背景との色の対比や意味付けも関係し、同じエネルギーでの視感度が高いこととは別です。
本問は色彩の好みや注意を引く性質ではなく、「明所視」「同じ放射エネルギー」という条件で比較しています。その条件を明確にし、緑より赤の方が強いという大小関係が逆であると判断します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。秩序性の原理は、配色に分かりやすい規則があると、まとまりを感じやすいとする考え方です。色相環は赤・黄・緑・青などの色相を輪に並べたもので、その上で等間隔に色を選ぶ配色は規則性をもちます。例えば円を3等分した位置から選ぶ配色です。ただし、どんな面積比や彩度でも誰もが必ず快く感じるという物理法則ではありません。色を組み合わせる際の調和の原理の一つとして理解します。
選択肢2
(2)不適当です。明るい場所での標準的な比視感度は黄緑付近で高く、赤側では低くなります。したがって同じ放射エネルギーという比較なら、一般に緑の方を強く感じます。赤い信号が目立つことから赤の感度が最大と判断しないようにしましょう。目立ちやすさには周囲との色差、面積、配置、学習した意味も関係します。本問の条件は、そうした効果とは分けて、波長に対する目の感度を問うものです。
選択肢3
(3)適当です。色光の加法混色は、異なる光を同じ場所へ重ねる操作です。赤・緑・青の光を適切な強さで加えると白色になり、スマートフォンの画面もこの原理を使います。「増やすほど白に近づく」は、異なる色成分を補っていく一般的な説明です。同じ赤い光だけを何本も重ねても白にはならず、赤が明るくなるだけです。光を足す加法混色と、絵具が特定の波長を吸収する減法混色を区別します。
選択肢4
(4)適当です。マンセル表色系は、色相、明度、彩度の三つで物体の色を表します。このうちバリューは明度で、理想的な黒を0、理想的な白を10とする尺度です。例えば明度の低い灰色より高い灰色の方が明るく見えます。ただし明度5が反射率50%という意味ではありません。人が感じる明るさの段階を表す尺度なので、反射するエネルギーの割合と数値が直線的に一致するわけではない点も押さえます。
周辺知識
目には主に錐体と桿体という光を受け取る細胞があります。十分明るい場所では錐体が働き、色の違いや細かい形を見分けます。非常に暗い場所では桿体の役割が大きくなり、色が分かりにくくなるうえ、感じやすい波長も変わります。そのため本問の「明所視」という指定を無視して、昼と夜の見え方を同じ条件で扱うことはできません。
色の説明には、別々の軸があることも大切です。比視感度は同じエネルギーの光に対する目の反応、色相は赤や青といった色味、明度は物体色の明るさ、彩度は鮮やかさです。配色の調和は、さらに色同士の関係や面積、使う場面を含む評価です。
例えば案内表示では、赤を使っただけで必ず読みやすくなるわけではありません。背景と文字の明度差、文字の太さ、照明、見る人の色覚なども影響します。色を唯一の手掛かりにせず、文字や形も組み合わせる設計が理解を助けます。物理的な光の量と、見る人が意味を読み取る過程を分けることが、色彩計画を暗記から理解へ変えるポイントです。