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学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問25

問題・正答・学習用解説

問題

建築物の工事請負契約又は監理業務委託契約に関する次の記述のうち、民間(旧四会)連合協定「工事請負契約約款」(平成29年12月改正)又は四会連合協定「建築設計・監理等業務委託契約約款」(平成27年2月改正)に照らして、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    工事請負契約において、受注者は、この契約を締結した後すみやかに請負代金内訳書及び工程表を監理者に提出し、工程表については監理者の承認を受ける。
  2. (2)
    工事請負契約において、受注者が定める現場代理人は、当該工事現場における施工の技術上の管理をつかさどる監理技術者と兼務することができる。
  3. (3)
    監理業務委託契約において、受託者は、委託者の承諾を得て監理業務の一部について、他の建築士事務所の開設者に委託した場合、委託者に対し、当該他の建築士事務所の開設者の受託に基づく行為全てについて責任を負う。
  4. (4)
    監理業務委託契約において、監理業務を原設計者と異なる建築士に委託したとき、委託者は、監理業務の段階において、設計成果物について変更の必要が生じた場合、原則として、設計変更業務を原設計者に別途委託しなければならない。

正答と解説

正答:(1)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢1です。指定された平成29年12月改正版では、請負代金内訳書は監理者に提出して確認を受け、工程表は発注者と監理者の双方へ提出します。工程表について監理者の承認を受けるという本肢の扱いは、指定約款の規定と一致しません。
請負代金内訳書は、契約した工事費がどの工種や費用から成るかを示す書類です。工程表は、どの工事をいつ行い、いつ完成させるかを示す予定表です。同じ契約後に提出する書類でも、提出先と必要な確認の扱いが異なります。内訳書への「確認」と工程表への「承認」を入れ替えて読まないことが大切です。
また、現場代理人と監理技術者は役割が違っても所定条件で兼務でき、一部を再委託した受託者は委託者に対する責任を負います。原設計者と異なる監理者を選んだ場合の設計変更は、原則として原設計者へ別途委託します。本問では約款の名称と改正年月が指定されているため、別の契約書や現在の改正版の表現を混ぜず、指定された版の役割と手続を確認して判断します。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:工程表を監理者の承認対象とした点が不適当です。平成29年12月改正版では、請負代金内訳書は監理者へ提出して確認を受け、工程表は発注者及び監理者へ提出します。本肢は両方を監理者への提出としてまとめたうえ、工程表の承認という扱いにしています。内訳書には同改正により健康保険等の法定福利費を明示する規定もありますが、提出する書類の役割を入れ替えるものではありません。「何を、誰へ、どの手続で」を書類ごとに読み分けます。

選択肢2

選択肢2:現場代理人が監理技術者を兼務できる本肢は適当です。現場代理人は、受注者を代理して現場に関する契約上の対応等を担う人です。監理技術者は、施工計画や工程・品質等の技術上の管理を担う人です。役割が異なるため名称も違いますが、必要な資格や配置等の条件を満たす人が兼ねることは可能です。ここでの監理技術者は施工者側の技術者であり、建築主側から設計図書との適合を確認する工事監理者とは別の役割である点に注意します。

選択肢3

選択肢3:承諾を得て監理業務の一部を他の建築士事務所へ委託しても、受託者が委託者へ責任を負う本肢は適当です。委託者は最初に契約した受託者へ仕事を頼んでいるため、受託者が一部を外部へ任せたことだけで責任が消えるわけではありません。再委託先の行為も含めて、契約上の業務が適切に行われるよう管理する必要があります。委託者の承諾は再委託を認める手続であり、再委託先の不適切な行為の責任を全て委託者が引き受けるという意味ではありません。

選択肢4

選択肢4:原設計者と別の建築士へ監理を委託した場合、必要な設計変更を原則として原設計者へ別途委託する本肢は適当です。工事監理は工事と設計図書を照合する業務であり、新しい設計内容を作成する業務が自動的に全て含まれるわけではありません。設計変更は、元の設計の意図や各部分への影響を踏まえて行う必要があります。「原則として」という条件も重要です。監理を担当する建築士が違うから、元の設計を自由に変更してよいと判断しないようにします。

周辺知識

請負契約は工事の完成と代金を中心に定め、監理業務委託契約は専門家が行う業務の範囲や報酬等を定めます。同じ建物でも、施工と監理では契約の相手や義務が異なります。受注者・発注者と受託者・委託者という言葉を、その契約の中で対応させて読みます。
確認、承認、協議、提出は同じ手続ではありません。提出は書類を渡すこと、確認は内容を確かめること、承認は内容を認めること、協議は話し合うことです。約款の問題では、見慣れた表現だから正しいとせず、どの書類にどの動作が必要かを正確に確認する必要があります。
原設計者と工事監理者が違う場合にも、設計と監理の責任の境目を明確にします。工事中の変更が必要になれば、その変更図書を誰が作成し、誰が依頼し、工事へどう反映するかを整理します。役割を曖昧にして現場だけで進めると、費用や品質、責任の行き違いにつながります。指定された契約条件に従い、変更を明確な手続で扱います。