資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅴ(施工)

一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問17

問題・正答・学習用解説

問題

左官工事、タイル工事及び石工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    鉄筋コンクリート造の外壁へのモルタル塗りにおいて、下塗りとしてポリマーセメントを調合したモルタルを塗り付ける際の1回の塗厚については、7mmとなるようにした。
  2. (2)
    セメントモルタルによるタイル後張り工法における密着張りにおいて、張付けモルタルの1回の塗付け面積の限度については、2m²/人以下とし、かつ、60分以内に張り終える面積とした。
  3. (3)
    モルタル下地への有機系接着剤によるタイル後張り工法において、外壁のタイル張りの施工の前に下地面の清掃を行い、下地面を十分に乾燥させた。
  4. (4)
    外壁乾式工法による鉛直面への石工事において、上下の石材間の目地幅の調整に使用したスペーサーを撤去した後に、シーリング材を充填した。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

最も不適当なのは選択肢2です。タイルの密着張りでは、張付けモルタルの1回の塗付け面積を2m2/人\displaystyle \mathrm{m}^{2}/\text{人}以下、かつ20分以内に張り終える面積とします。本肢の60分は長過ぎます。2m2/人\displaystyle \mathrm{m}^{2}/\text{人}という条件が正しくても、時間の条件が誤っています。
塗り広げたモルタルは、時間がたつと表面から水分を失い、タイルが十分になじみにくくなります。表面が乾いた後に押し付けても、裏面との接触や付着が不十分となり、将来の浮きや剝落につながるおそれがあります。そこで、一度に広く塗り過ぎず、状態がよい間に確実に張り終えられる範囲に区切ります。
20分は、気温や風に関わらず必ずその時刻まで良好という保証ではありません。暑さや乾燥風で表面の状態が悪くなる場合は、さらに早く対応する必要があります。他の肢は、モルタルを一度に厚塗りし過ぎないこと、有機系接着剤の下地を清掃・乾燥すること、石の目地調整用スペーサーを撤去してシーリングすることです。材料が適切に付着し、必要な動きができる状態を確保するという観点で読みます。

各選択肢の解説

選択肢1

選択肢1:ポリマーセメントを調合した下塗りモルタルを1回7mmで塗る本肢は適当です。ポリマーは付着性等を改善するために加える樹脂成分です。モルタルを一度に厚く塗り過ぎると、自重によるだれや乾燥収縮によるひび割れなどが生じやすくなります。必要な厚さを適切な工程に分けてつくることが大切です。樹脂を加えたから厚さや養生の管理が不要になるわけではありません。下地の状態や材料指定に合わせ、付着を確保して次の層へ進みます。

選択肢2

選択肢2:60分以内に張り終える面積とした点が不適当です。密着張りの張付けモルタルは2m2/人\displaystyle \mathrm{m}^{2}/\text{人}以下、かつ20分以内に張り終える範囲にします。面積の条件は一度に広げ過ぎないため、時間の条件はモルタル表面の状態を保つためのものです。作業者一人で2m²を張るのに30分かかるなら、2m²以下だからよいとせず、さらに小さく区切る必要があります。面積と時間の厳しい方に合わせ、実際の気温や風、作業速度を見ながら施工します。

選択肢3

選択肢3:有機系接着剤で外壁タイルを張る前に下地を清掃し、十分に乾燥させる本肢は適当です。ほこりが付いた面では、接着剤が下地本体でなくほこりの層に付いてしまいます。余分な水分も接着や硬化に悪影響を及ぼす場合があるため、指定された乾燥状態を確保します。セメントモルタルの急な吸水を防ぐための水湿しと、同じ扱いにしないことが重要です。張付け材料がモルタルか有機系接着剤かによって、下地に求める状態を切り替えて考えます。

選択肢4

選択肢4:目地幅調整用のスペーサーを取り除いてからシーリング材を充填する本肢は適当です。乾式石張りは、主に金物で石を支持する工法です。施工時には上下の石の隙間をそろえるためスペーサーを使いますが、残すと石同士の動きを拘束したり、上の石の力を下へ直接伝えたりするおそれがあります。目地は単なる見た目の線ではなく、変形を受け止め、防水する部分でもあります。所定の支持金物で石を保持し、仮の調整材を除いて適切に目地を仕上げます。

周辺知識

左官や張付け工事は、材料を塗ってから固まるまでの時間を利用する工事です。材料を練った時点、下地へ塗った時点、タイルを張った時点では、管理する時間の意味が違います。容器内では使える状態でも、薄く塗り広げた表面は早く乾くことがあります。
付着を確保するには、材料の性能と施工状態の両方が必要です。高性能な接着剤でも、下地のほこりや水分、塗付け不足、時間超過があれば性能を発揮できません。施工を早く進めるために広い面へ先に塗っておく方法が、かえって手直しや剝落の危険を増やすことがあります。
仕上げの目地には、寸法の誤差を吸収する、温度や地震による動きを受ける、水を止めるといった働きがあります。隙間が均一であれば完成ではなく、内部に不要な仮材が残っていないか、シーリングの接着や深さが適切かも確認します。見える仕上がりと、見えない接着面・支持部を合わせて管理することが大切です。