学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和2年度 学科Ⅴ(施工) 問1
問題・正答・学習用解説
問題
監理者が行う一般的な監理業務に関する次の記述のうち、「建築士事務所の開設者がその業務に関して請求することのできる報酬の基準(平成31年国土交通省告示第98号)」の「工事監理に関する標準業務及びその他の標準業務」の内容に照らして、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢1です。設計図書の明らかな矛盾や誤り、不足を発見した監理者は、まず建築主に報告し、必要に応じて建築主を通じて設計者に確認します。施工者に確認してから設計者へ報告するという本肢は、報告先と確認の経路を入れ替えています。
設計図書とは、建物の寸法や材料、性能などを定めた図面・仕様書です。例えば、平面図と構造図で柱の位置が違う場合、そのまま工事を進めれば要求どおりの建物になりません。工事を依頼している建築主に問題を知らせ、設計の意図や修正内容を確認する必要があります。施工者との現場調整だけで設計内容を決め直すものではありません。
工事監理の中心は、実際の工事が設計図書に適合するかを確認することです。本問の告示では、その業務に加え、材料の提案や施工計画の検討、契約に基づく検査・協議等も整理されています。監理者が自分で全ての工事を施工するわけではなく、設計・施工・発注の立場をつなぎ、必要な確認と報告を行う点を押さえます。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:報告先を施工者、次の相手を設計者としている点が不適当です。設計図書の矛盾、誤謬つまり誤り、脱漏つまり記載漏れなどを見つけた場合は、建築主へ報告し、必要に応じて建築主を通じ設計者へ確認します。施工者に施工上の状況を尋ねることがあっても、この基本的な報告経路が置き換わるわけではありません。建築主が設計上の問題を知らないまま、現場だけで設計変更を決めないようにする仕組みとして理解します。
選択肢2
選択肢2:提案された工事材料や設備機器、見本等が設計図書に適合するか検討し、建築主へ報告する本肢は適当です。例えば、外壁材の見本が指定の色だけでなく耐久性や防火性能も満たすかを確認します。見た目が似ていればよいという確認ではありません。設計図書の定めに応じて製造者や専門工事業者も検討対象になります。ただし、材料を調達し施工する責任そのものが、確認した監理者へ全て移るという意味ではありません。
選択肢3
選択肢3:施工計画から契約上の工期と設計上の品質を確保できないおそれがないか検討する本肢は適当です。例えば、コンクリートを十分に養生する日数が工程に確保されていなければ、完成日を守ろうとするだけで品質が損なわれかねません。監理者は問題のおそれを判断したとき、建築主へ報告します。施工計画を作成するのは施工者であり、監理者は単に日付を読むだけでなく、その計画で要求が満たせるかを所定の範囲で検討します。
選択肢4
選択肢4:請負契約で定められた指示、検査、協議、承認等を監理者が行い、施工者の求めにも速やかに応じる本肢は適当です。例えば、後の工程で隠れてしまう部分を確認する必要がある場合、対応が滞ると工事全体にも影響します。設計図書に定めるものを除くという括弧は、契約に基づくその他の業務を区別している表現です。設計図書に関する確認を一切しなくてよいという意味ではなく、どの定めに基づく業務かを整理しています。
周辺知識
建築主は建物を発注する人、設計者は建物の内容を図面等で定める人、施工者はその内容を現場で実現する人、工事監理者は工事と設計図書を照合する人です。同じ人や組織が複数の役割を担う場合もありますが、問題を読むときは役割を分けると報告先を判断できます。
「工事監理」と「施工管理」も区別します。施工管理は、施工者側が品質、工程、安全などを具体的に管理することです。工事監理者が設計への適合を確認しても、施工者が日常の安全管理や作業手順の管理を省いてよいわけではありません。確認と実施の責任は同じではないからです。
例えば窓の寸法が図面間で食い違った場合、施工者が加工しやすい方を勝手に選ぶと、採光や防火など別の要求に影響することがあります。誰が設計上の判断を行い、誰が発注者へ報告し、誰が変更を施工へ反映するかを明確にして進めます。役割の整理は、伝達漏れと手戻りを防ぐ実務上の意味も持っています。