学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅳ(構造) 問28
問題・正答・学習用解説
問題
コンクリートに関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
圧縮強度試験は、円柱などの供試体を上下から押し、破壊までに受けた最大荷重を断面積で割って強度を求める試験です。載荷速度は、その押す力をどれだけ速く増やすかという条件です。同じコンクリートでも、一般に載荷速度が大きいほど測定される圧縮強度は大きくなるため、選択肢1の「小さい」が逆です。
コンクリート内部には、骨材とセメントペーストの境目などに微細なひび割れがあり、押されるとその発生・進展や時間に依存する変形が進みます。ゆっくり載荷すると、それらが進む時間がある一方、速い載荷では変形やひび割れの進み方が変わり、見かけの破壊荷重が高くなる傾向があります。速く押せば材料の品質がよくなったという意味ではありません。比較できる試験結果にするため、載荷方法や速度をそろえます。
他の選択肢は水セメント比、引張強度、曲げ強度、ヤング係数の関係です。水セメント比は水の質量をセメントの質量で割った比で、大きいほど硬化体に空隙が残りやすく、一般に強度や曲がりにくさが低下します。ただし、養生や骨材などの条件も影響するため、一つの比だけで全ての試験値が正確に決まるわけではありません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)載荷速度が大きいほど、一般に圧縮強度は大きく測定される傾向があります。ゆっくり荷重を増やした場合には、材料内部の時間依存の変形やひび割れの進展が進むため、速い載荷と同じ結果にはなりません。これは試験条件による見かけの強度の違いであり、施工したコンクリート自体を強くする方法ではありません。供試体の材齢や養生条件だけでなく、荷重を増やす速さもそろえなければ、異なる試験結果を公平に比較できません。
選択肢2
(2)水セメント比が大きいと、硬化後に水が占めていた空隙が多く残りやすく、ペースト部分や骨材との境目が引張りに抵抗しにくくなります。そのため引張強度が一般に小さくなるという記述は適切です。水はセメントの反応に必要ですが、必要以上の水を増やしてよいという意味ではありません。また、単位水量と水セメント比は別で、同じ水量でもセメント量が変われば比は変わります。二つの質量の比として条件を読みます。
選択肢3
(3)コンクリートの梁状の試験体を曲げると、一方の側が押され、反対側が引っ張られます。曲げ破壊には引張側から生じるひび割れが重要なので、引張強度が大きいほど曲げ強度も一般に大きくなります。ただし、曲げ試験では断面内の応力度が一様でなく、直接引張試験と同じ数値になるわけではありません。「同じになる」ではなく「大きいほど大きくなる」という傾向の記述です。関連する二つの試験値を同一の物性値として置き換えないようにします。
選択肢4
(4)ヤング係数は、弾性範囲で同じ応力度を与えたときのひずみの小ささを表す値です。水セメント比が小さいほど硬化体が緻密になりやすく、一般にヤング係数も大きくなります。つまり同じ応力度の下で変形しにくい方向です。ただし、コンクリート全体の変形には骨材の種類や量も大きく影響するため、水セメント比だけで厳密に決定するわけではありません。圧縮強度が壊れる限界、ヤング係数が変形しにくさという違いも押さえます。
周辺知識
応力度は力を断面積で割った値、ひずみは伸び縮み量を元の長さで割った割合です。例えば長さが縮めば圧縮ひずみの大きさは0.001です。応力度とひずみの関係の傾きがヤング係数に対応します。最大でどれだけの応力度へ耐えたかという圧縮強度とは、見ている性質が違います。
コンクリートの強度は、セメントと水の反応で作られる硬化体、骨材との境目、空隙や微細なひび割れの影響を受けます。水セメント比を下げると一般に緻密になりますが、打込みや締固めが不十分で大きな空洞ができれば、その利点を発揮できません。十分に湿潤状態を保つ養生なども、必要な反応を進めるために重要です。
試験で得た強度を比べる際は、供試体の寸法、材齢、養生、含水状態、載荷の方法や速度などをそろえます。材料が同じでも試験条件が違えば結果は変わります。本問の載荷速度は、その代表例です。計算に用いる設計基準強度は、都合のよい試験速度で得た最大値をそのまま採用するものではなく、品質管理と所定の評価を経て扱います。