学科Ⅱ(環境・設備)
一級建築士 令和7年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問20
問題・正答・学習用解説
問題
環境・設備に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。住宅の外皮性能基準で確認する日射の指標は、暖房期ではなく「冷房期の平均日射熱取得率」 です。外皮平均熱貫流率 とともに、地域に応じた基準を確認します。
外皮とは、室内と屋外を隔てる屋根、壁、窓、床などの部分です。 は、外皮全体を通して温度差によって熱がどれくらい逃げるかを、外皮面積で平均した指標です。小さいほど熱が逃げにくくなります。一方、 は冷房期に日射の熱がどれくらい室内へ入りやすいかを表し、小さいほど夏の日射熱を抑えます。
冬の日射は室内を暖め、暖房の負担を減らすこともあります。したがって、日射を一律に少なくすれば冬も夏も同じように有利というわけではありません。本肢は、夏の過熱を抑えるために基準で用いる指標を、暖房期の指標へ入れ替えています。断熱は内外温度差による熱、日射遮蔽は太陽から来る熱という別の経路です。地域によって気候や基準の適用が異なることも含め、制度は出題時点の条件で読みます。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。エンボディドカーボンは、材料を採取・製造・輸送し、建物を建設・改修・解体するなどの過程で生じる温室効果ガス排出を捉えるものです。建物が使われる間の冷暖房や照明による排出だけを見ていては、建設のために使ったエネルギーなどが抜け落ちます。ホールライフカーボンは建物の生涯全体での排出で、その中にエンボディドカーボンと使用段階の排出が含まれます。高効率設備を導入して運用を改善することと、材料や改修計画を工夫することが、別々の面で排出削減に関係します。
選択肢2
(2)適当です。ZEHは、まず外皮の断熱を高めて冷暖房に必要な熱を減らし、次に高効率な設備で使うエネルギーを減らし、その上で再生可能エネルギーを利用して年間の一次エネルギー収支を正味ゼロ以下にする住宅です。太陽光パネルを多く載せれば建物の性能を問わない、という考え方ではありません。また年間の収支なので、夜間や雨の日に外部から電気を全く使わない住宅という意味でもありません。必要量を減らすことと、エネルギーを作ることの順序を理解します。
選択肢3
(3)適当です。一次エネルギー消費量等級4は、出題時点の住宅省エネルギー基準における基準値相当の性能を示します。一次エネルギーは、電気などを使う場所での量だけでなく、発電など上流側の消費をそろえて比較する考え方です。等級は性能を段階で表す表示で、等級4は「最高性能」や「エネルギー消費ゼロ」を意味しません。断熱等性能等級という別の表示もあるため、同じ数字だけを見ず、何の性能の等級かを確かめることが大切です。
選択肢4
(4)不適当です。外皮平均熱貫流率 と組み合わせて確認するのは、冷房期の平均日射熱取得率 です。「暖房期」を「冷房期」と直します。記号のCを冷房のCoolingと結び付けると区別しやすくなります。夏に太陽から大量の熱が入れば冷房負荷が増えるため、日射の入りやすさへ上限を設ける意味があります。冬の日射には暖房を助ける面があり、暖房期と冷房期の取得熱を同じ目的で制限しているわけではありません。季節を一語ずつ確認します。
周辺知識
省エネルギー性能を読むときは、建物の外皮、設備、再生可能エネルギー、建物の生涯全体という評価の範囲を分けます。外皮を改善すると熱の出入りが減り、設備を高効率にすると同じ快適さを少ないエネルギーで得られます。太陽光発電などは、その必要なエネルギーを供給する側へ働きます。生涯の排出まで評価すると、材料の製造や更新の影響も加わります。
の単位は です。窓だけのU値とは違い、屋根・壁・床なども含む外皮全体の平均です。面積が大きい部分の性能は平均値へ大きく影響するので、高性能な窓を一枚入れただけで住宅全体が十分な断熱になるとは限りません。
一次エネルギー消費量は、電気、ガスなど異なるエネルギーを共通の尺度へ換算して比較するためのものです。電気の使用量kWhとガスの使用体積をそのまま足し算することはできません。ZEHの正味ゼロも、このような定められた評価範囲と計算条件に基づく年間収支です。実際の暮らし方による請求額や、全ての時刻の電力自給率と同じ意味ではないことを押さえます。