学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和6年度 学科Ⅳ(構造) 問26
問題・正答・学習用解説
問題
図は、剛床仮定が成り立つ、4階建て鉄筋コンクリート造の建築物の軸組図と1階平面図の模式図である。偏心によるねじれを小さくする方法として、最も不適当なものは、次のうちどれか。ただし、Sは剛心、Gは重心、は地震力(層せん断力)を示し、耐力壁の増減による重心位置の変更はないものとする。
選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
耐力壁Cを削除する選択肢3が、ねじれを小さくする目的に反します。図のSは剛心、Gは重心で、GがSより右にあります。下向きに描かれた地震力はGに作用するため、Sまわりにはのねじるモーメントが生じます。はSとGの水平方向のずれです。
剛心は、その方向の柱や壁の水平剛性の重み付き平均に相当する位置です。Cは右端にある縦向きの耐力壁なので、これを取り除くと右側の抵抗が減り、剛心はさらに左へ寄ります。問題では壁の変更で重心Gは動かないと指定しているため、偏心距離は大きくなります。さらに、外周の壁を失うことで回転へ抵抗する能力も減る側となり、ねじれの改善にはなりません。
逆に、右端のAを厚くする、Sより右側へBを追加する方法は、剛心をG側へ近づけます。Dは地震力と直角の横向きの壁ですが、平面の上側と下側に離して加えることで、建物が回転するときの横移動へ抵抗し、ねじり剛性を高めます。偏心を減らす方法と、回転しにくくする方法の両方を見分ける問題です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適切です。右端のAを厚くすると、図の鉛直方向へ抵抗する右側の壁が硬くなり、剛心が右へ移動する側になります。もともとGはSより右なので、両者のずれを小さくする効果があります。また、外周の壁を強めることはねじり抵抗にも寄与します。重心も右へ動くのではないかと考えたくなりますが、本問では壁の増減による重心位置の変更はないと明示されているため、Gを固定して判断します。
選択肢2
(2)適切です。Bは、現状の剛心Sより右側に追加する縦向きの耐力壁です。その方向の水平剛性を右側へ増やすことで、剛心を重心Gへ近づけ、地震力の偏心による回転を小さくする方向に働きます。どこに壁を増やしても同じではなく、現状のSとGの位置に対し、どちら側の抵抗を増やすかが重要です。左側に同様の壁を加えると、剛心がさらに左へ寄って逆効果になる場合があります。
選択肢3
(3)不適切です。右端のCを削除すると、右側の水平剛性が減り、剛心は重心Gから離れる左側へ移る方向になります。が同じなら偏心距離が増した分だけねじりモーメントも増します。壁を減らせば建物が軽くなるという効果は、本問の重心固定の条件や、ねじれを小さくする比較へ持ち込めません。耐力壁を取り除く位置によって剛心がどう動くかを、左右の剛性の重み付き平均として考えます。
選択肢4
(4)適切です。Dは上下の外周に置く横向きの壁なので、鉛直方向の並進に対する剛心を右へ移すことが主な効果ではありません。建物が平面内で回転すると、上側と下側は互いに反対向きに横へ動きます。そこをDの壁が押さえることで、回転に対する抵抗が増えます。地震力と直角の壁でも、ねじれを抑える役割があります。地震力の矢印と平行な壁だけを見て、Dを無効と判断しないことが大切です。
周辺知識
剛床仮定は、床が平面内では十分硬く、床の各点が別々に伸び縮みするより、一つの板として平行移動し回転すると考える仮定です。床が完全に動かないという意味ではありません。この考え方により、重心で受けた地震力を、柱や壁へ剛性に応じて分配できます。
同じ方向に抵抗する各壁の剛性を、位置をとすれば、剛心位置は概念的にで表せます。硬い壁のある側ほど平均の位置が引き寄せられます。重心Gは重さの平均位置、剛心Sは硬さの平均位置であり、高さや壁配置が偏った建物では一致しないことがあります。
ねじれ角は概ね、ねじりモーメントをねじり剛性で割ったものです。ねじり剛性にはのように、壁の硬さと回転中心からの距離の2乗が関係します。回転中心から遠い外周の壁ほど、小さな回転でも大きく動かされ、その反力が長い腕で回転を止めるためです。したがって、GとSを近づけるだけでなく、外周へ抵抗要素を配置して回転そのものを抑える方法もあります。本問のDは、この第二の効果を確かめる選択肢です。



