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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅳ(構造) 問17

問題・正答・学習用解説

問題

鉄骨構造の耐震計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    「ルート1-1」において、スパンは6m以下とした。
  2. (2)
    「ルート1-2」において、偏心率の確認を行わず、標準せん断力係数を0.3として地震力を割増した。
  3. (3)
    「ルート2」において、地上部分の塔状比を4以下とした。
  4. (4)
    「ルート3」において、筋かい付き骨組の保有水平耐力は、柱及び筋かいの水平せん断耐力の和とした。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

選択肢2では、ルート1-2で必要な偏心率の確認を省略している点が誤りです。このルートでは標準せん断力係数C0\displaystyle C_0を0.3以上とすることに加え、各階の偏心率が0.15以下であることなどを確認します。C0=0.3\displaystyle C_0=0.3による地震力の割増しは、偏心率の確認の代わりにはなりません。
偏心とは、建物の重さの中心である重心と、横へ動きにくさの中心である剛心がずれることです。地震力は重心付近に作用する一方、抵抗する柱や筋かいが一方へ偏っていると、建物が平面内でねじれるように変形します。偏心率は、そのずれを建物のねじれにくさに関係する長さで割った、単位のない指標です。
一方、C0\displaystyle C_0は設計用地震力の大きさの基準です。通常の基準値0.2と比べると0.3は1.5倍ですが、全体の力を増やすだけで、どの柱へねじれによる力が集中するかまでは確認できません。ルート1-2では、力の大きさと平面的なバランスを両方満たす必要があります。根拠のない別の係数へ置き換えて偏心率の確認を省くのではなく、適用ルートに定められた条件の組合せを守ります。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適切です。スパンは、ここでは柱と柱の間隔です。ルート1-1は比較的小規模な鉄骨造を対象とする簡略な計算ルートで、スパン6 m\displaystyle 6\,\mathrm{m}以下という適用条件があります。スパンが長くなると梁の曲げやたわみ、接合部に伝える力が大きくなり、単純に同じ扱いを広げられません。なお、スパンだけでルートが決まるのではなく、階数、高さ、面積など他の条件も合わせて満たす必要があります。

選択肢2

(2)偏心率が0.15以下であることを確認する必要があり、不適切です。標準せん断力係数0.3はルート1-2で使う地震力の基準であって、偏心の確認を省略するための特別な代替条件ではありません。筋かいが片側に集まる平面では、全体が横へ動く成分に、回転する成分が加わって端の柱の変形が大きくなることがあります。強度を割り増す確認と、ねじれが過大にならない配置の確認は別々に行います。

選択肢3

(3)適切です。塔状比は、建物の高さを平面の幅で割った、建物全体の細長さを示す値です。高さ24 m\displaystyle 24\,\mathrm{m}、幅6 m\displaystyle 6\,\mathrm{m}なら4になります。ルート2では地上部分の塔状比を4以下とする条件があり、極端に細長い建物は、同じルートの前提に収まりません。柱1本の細長比や、鋼板の幅厚比とは対象が違います。高く幅が狭い建物では転倒や浮上りなどの影響が重要になるため、建物全体の形を確認します。

選択肢4

(4)適切です。筋かい付き骨組では、柱が曲げによって水平力へ抵抗する分と、筋かいが軸方向力の水平成分で抵抗する分を合わせて、骨組の保有水平耐力を評価します。筋かいの軸耐力をそのまま足すのでなく、作用方向へ分解した水平せん断耐力を用います。また、それぞれが同じ変形段階で発揮できる力として評価することが必要です。圧縮筋かいの座屈や接合部破断を無視して、材料の最大強度だけを自由に合計する扱いではありません。

周辺知識

構造計算のルートは、どこまで詳細に安全性を確認するかと、その方法を使える建物の条件をまとめたものです。番号が違うだけの同じ計算ではなく、規模や形状を限定して簡略化する方法、変形や剛性・偏心を追加確認する方法、降伏後の保有水平耐力まで求める方法があります。
簡略なルートでは、詳細な解析を省ける代わりに、地震力の割増し、寸法の制限、接合部の破断防止、局部座屈の防止などの条件を組み合わせます。必要な確認を一つ抜いたまま、別の条件だけを強くしても、規定した設計方法を満たしたとは限りません。本問では0.3という数字自体より、「偏心率の確認を行わず」という行為との組合せが問題です。
平面上の偏りは偏心率、高さ方向の硬さの偏りは剛性率、建物全体の細長さは塔状比、階と階の横ずれは層間変形角で確認します。どれも地震への安全性に関係しますが、同じ指標ではありません。過去問の計算ルートは出題時の条件に沿って整理し、実際の設計では改正後の法令や対象建物に適用される告示を確認します。部材の強度計算と、建物全体の揺れ方の確認を分けて理解すると、条件の取り違えを防げます。