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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和6年度 学科Ⅳ(構造) 問13

問題・正答・学習用解説

問題

鉄筋コンクリート構造の許容応力度計算に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    柱の長期許容せん断力の算定において、帯筋の効果を考慮しなかった。
  2. (2)
    梁の長期許容せん断力を大きくするために、あばら筋をSD295からSD345に変更した。
  3. (3)
    梁の短期許容せん断力の算定において、主筋のせん断力の負担を考慮しなかった。
  4. (4)
    開口を有する耐力壁において、開口周囲の縦筋や横筋の負担分を考慮して、設計用せん断力に対して必要となる開口補強筋量を算定した。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

選択肢2の変更では、梁の長期許容せん断力を大きくする目的を達成できません。あばら筋は梁の主筋を囲む横補強筋で、斜めに開こうとするせん断ひび割れを横切って引張力を負担します。しかし、その長期許容応力度はSD295でもSD345でも195 N/mm2\displaystyle 195\,\mathrm{N/mm^2}であり、鋼種を変えても計算に使う値が変わらないためです。
SDの後ろの295や345は鋼材の降伏点などに対応する強度区分を示しますが、その数字をあらゆる許容計算へ直接代入するわけではありません。長期は建物の自重などが長く作用する状態なので、破断しないことだけでなく、ひび割れや使用上の支障も抑える必要があります。せん断補強筋には、その目的に対応した長期の上限を使います。
長期のせん断ひび割れを許容しない算定では、コンクリートの寄与で許容せん断力を評価します。所定のひび割れを許容して梁のあばら筋の効果を考慮する場合でも、両鋼種の長期許容応力度は同じです。したがって「長期は補強筋が一切働かない」と覚えるのではなく、どの算定法でも今回の鋼種変更だけでは値が増えないことを押さえます。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適切です。柱の長期許容せん断力の所定の算定では、コンクリートによる負担を評価し、帯筋の効果を加算しない扱いです。帯筋は柱の主筋を囲む鉄筋で、せん断への抵抗、主筋が横へはらみ出すことの防止、コンクリートの拘束などにも重要な役割を持ちます。長期許容せん断力に加算しないことと、帯筋を配置しなくてよいことは別です。計算式に現れない役割や、最低限の配筋規定もあります。

選択肢2

(2)SD295からSD345に変更しても、せん断補強筋としての長期許容応力度は195 N/mm2\displaystyle 195\,\mathrm{N/mm^2}のままであり、不適切です。たとえば有効な補強筋断面積を100 mm2\displaystyle 100\,\mathrm{mm^2}とすれば、この応力度を掛けた力は両方とも19,500 N\displaystyle 19,500\,\mathrm{N}で変わりません。梁全体の許容せん断力はさらにコンクリートや配筋率などを含めて算定しますが、今回変更した部分の寄与は増えません。主筋としての長期許容値や、短期の値を取り違えないことが大切です。

選択肢3

(3)適切です。通常の短期許容せん断力の算定では、コンクリートとせん断補強筋による負担を評価し、部材の長さ方向に走る主筋がせん断力を直接負担する分を加算しません。主筋は主として曲げによる引張り・圧縮を受け、あばら筋は斜めの割れをまたいで働きます。実際の主筋には割れ面でのずれに抵抗する作用などもありますが、物理的な作用が少しでも存在すれば設計式へ自由に足してよいということではありません。

選択肢4

(4)適切です。開口を設けると、その場所を通るはずの力が開口の周囲へ迂回し、周囲の縦筋・横筋や追加の補強筋へ力が集まります。既に配置されている縦筋・横筋のうち、有効な位置と必要な定着を満たすものが負担できる力を考慮して、追加の補強筋量を求められます。周囲にある鉄筋を無条件に全部差し引くわけではありません。設計用せん断力に対して、どの鉄筋がどの方向の力を受け渡せるかを確認します。

周辺知識

許容応力度計算は、設計で想定する荷重によって生じる応力度を、使用目的に応じて定めた上限以内に収める計算です。材料を限界まで引っ張って得る強度試験の値と、建物の中で長く使ってよい応力度は一致しません。特にコンクリートでは、ひび割れが大きくなると、たわみ、耐久性、防水性などにも影響します。
長期と短期は、単に時計で測った荷重時間だけの違いではなく、自重などの持続的な荷重状態と、地震・風などの一時的な荷重状態を区別した設計上の区分です。さらに同じ短期せん断の検討にも、損傷を抑えるための確認と、大きな力に対して安全性を確保する確認があります。式の目的に対応する許容値を選びます。
「強い鉄筋へ交換すれば全部の耐力が上がる」とは限りません。本問のように許容応力度の上限が同じなら、材種変更の効果は現れません。配筋量、間隔、断面幅、梁せい、コンクリート強度などの変更についても、対象の式にどう効くかを確かめます。同時に、せん断を補強した結果ほかの破壊が先行しないか、開口周囲まで力が連続して流れるかを確認することが構造設計の考え方です。