資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅳ(構造) 問30

問題・正答・学習用解説

問題

特定天井に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    「建築物における天井脱落対策に係る技術基準(国土交通省)」において、特定天井は、稀に生じる地震動の発生時(中地震時)において、天井の損傷を防止することにより、中地震時を超える一定の地震時においても天井の脱落の低減を図ることを目標としている。
  2. (2)
    既存建築物の増改築においては、特定天井の落下防止措置として、ネットやワイヤーにより一時的に天井の脱落を防ぐ方法は認められていないので、新築時と同様の技術基準に適合させる必要がある。
  3. (3)
    免震構造の採用により、地震時の加速度が十分に抑えられている場合においても、特定天井についての構造耐力上の安全性の検証は行う必要がある。
  4. (4)
    特定天井のうち、天井と周囲の壁等との間に隙間を設けない構造方法であっても、地震時における天井材の脱落に対する安全性の検証を行う必要がある。

正答と解説

正答:(2)

正答の考え方

既存建築物の増改築で、ネットやワイヤーによる落下防止措置が認められないとする記述が誤りです。所定の対象・条件を満たす既存天井では、新築と同じ方法へ全面改修するほかに、脱落した天井を一時的に保持する落下防止措置を用いる扱いがあります。
この措置の目的は、天井の全ての損傷をなくすことではなく、万一脱落しても直ちに人のいる場所へ落ちないようにし、避難の時間を確保することです。ネットやワイヤーだけでなく、それらの取付け先まで、天井の落下時の衝撃を伝えられる強度が必要です。市販の網を単に張ればよいという意味ではありません。
対象は、増改築する部分以外の既存天井で、新設天井ではないことや、増改築部分の天井と構造上分離していることなどの条件があります。既存の建物内へ新しく設ける天井まで、同じ代替措置を自由に使えるわけではありません。基準が求める「損傷を防ぐ方法」と「脱落後の落下を防ぐ方法」の違いを理解すると、誤った一律の否定を見分けられます。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)特定天井の基準は、中地震時に天井の損傷を防止し、それを超える一定の地震でも脱落の危険を低減することを目標にしています。あらゆる大地震で無損傷を保証するという内容ではありません。吊り材、下地材、接合部などの力の流れを確保し、中地震で損傷しにくい状態を作ることが、大きな揺れに対しても落下の危険を抑えることにつながります。建物本体の倒壊防止とは別に天井の安全目標を確認します。

選択肢2

(2)一定の条件では、ネットやワイヤーなどによって脱落した既存天井を一時的に保持する方法が認められます。目的は利用者が避難するための時間を得ることで、損傷した天井を永久にそのまま支え続ける保証ではありません。落下の衝撃を含む荷重に耐え、支持する構造体へ力を伝える設計が必要です。新築と同じ基準に適合させる方法しかないという記述は、この条件付きの代替措置を落としているため不適切です。

選択肢3

(3)免震で上部の水平加速度が抑えられても、天井へ作用する力が完全に0になるわけではありません。天井自身の質量、取付け高さ、吊り長さ、建物の応答や上下動などに応じた安全性の確認が必要です。免震採用という名称だけを理由に、接合部や吊り元の検討を省略できません。小さく評価した地震力であっても、その力を天井材から構造体まで確実に伝えられることを確認する記述として適切です。

選択肢4

(4)周囲に隙間を設けない方式でも、天井の地震力を天井面と周囲の壁などへ伝え、建物の変形へ追従できることを確認する必要があります。隙間がないから天井が動かず安全、と考えるのは不十分です。周辺へ押し付ける力や強制変形に対して、天井面・壁・接合部の剛性と強度を確保します。隙間を設ける方式と設けない方式では、抵抗と変形の仕組みが異なり、それぞれに対応した検証が必要です。

周辺知識

特定天井は、脱落すると重大な危害を生じるおそれがある天井です。人が日常利用する場所にある吊り天井のうち、高さ6 m\displaystyle 6\,\mathrm{m}超、面積200 m2\displaystyle 200\,\mathrm{m^2}超、単位面積質量2 kg/m2\displaystyle 2\,\mathrm{kg/m^2}超などの条件に該当するものが対象になります。大空間の体育館やホールなどでは、建物が倒壊しなくても、高い位置から大きな天井が落ちると危険です。
吊り天井の力は、天井板から野縁などの下地、吊り材、吊り元を通って構造体へ流れます。途中のクリップやねじなど一つの接合が弱いと、そこで経路が切れて脱落が広がることがあります。そのため板だけを軽くしたり、吊りボルトだけを太くしたりしても、全体の安全性を確保できるとは限りません。
地震時には横移動と建物の変形、屋外の天井には風圧も考慮します。落下防止措置を採用した既存天井も、損傷後にそのまま使い続けるためのものではなく、避難後の点検・復旧が必要な状態を想定しています。非構造部材という呼び名は、建物本体を支える主要部材ではないという意味であり、人の安全に無関係という意味ではありません。