学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅳ(構造) 問27
問題・正答・学習用解説
問題
木材の破壊の性状として、一般に、脆性的な性状を示さないものは、次のうちどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
一般に脆性的な性状を示さないのは、繊維に直交方向の圧縮によるめり込みです。脆性的とは、大きな変形を示す前に割れや破断が進み、急に耐力を失いやすい性質をいいます。めり込みでは木材の細胞が横方向へ押し潰され、変形が増えても抵抗を保ちながら進むため、他の選択肢の破壊とは性状が異なります。
木材は、長い細胞が幹の方向へ並んだ材料です。土台の上に柱が載る部分や、梁の上へ柱が載る部分では、下の横材の繊維に対して直角方向に圧縮が加わります。ここが局部的に沈み込むのがめり込みです。繊維を引き離して割る場合とは違い、細胞を押し潰しながら変形が蓄積します。
ただし、急に壊れにくいことは、いくらでもめり込ませてよいという意味ではありません。柱や梁の位置が下がり、建具や床の不具合、接合部の緩みを生むので、許容される応力度や変形を確認します。壊れ方の穏やかさと、日常使用に必要な変形の小ささは別の要求です。力の向きが繊維と平行か直交か、圧縮か引張りかを分けて判断します。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)繊維に直交する圧縮では、細胞の中空部分が押し潰されるように変形し、急激に二つへ割れるよりも、めり込みながら抵抗を続ける性状を示します。そのため、この中では脆性的でないものとして選びます。身近な例は、細い脚で木の板を押して跡が付く状態です。ただし実際の構造では、支持面積を十分に取り、過大な沈み込みを防ぎます。変形能力があることと、設計上の制限がないことは同じではありません。
選択肢2
(2)繊維に直交する引張りは、並んだ繊維同士を引き離す方向です。木材はこの方向の引張りに弱く、いったん割れが始まると繊維に沿って急に進展しやすくなります。ボルトや切欠き付近で、力の伝わり方によってこのような割裂が生じることがあります。圧縮で細胞を潰すめり込みとは違い、割れた後に力を伝える断面が急に失われるため、脆性的な性状として扱います。
選択肢3
(3)繊維に平行な圧縮でも、細長い部材では材料が均等に潰れる前に、全体が横へ曲がる座屈が起こり得ます。小さな曲がりが圧縮力によってさらに拡大され、急に荷重を支えにくくなる不安定現象です。木材自体の圧縮強さだけでなく、部材長さ、断面の曲がりにくさ、端部の支え方に左右されます。本問は単なる短い試験片の圧縮ではなく「全体座屈」と指定している点が重要です。
選択肢4
(4)繊維に平行な引張りでは、長い繊維が軸方向の力を受け持ちますが、限界へ達すると繊維が切れ、破断が急に進みやすくなります。節や繊維の傾斜などがあると局部へ応力が集中し、そこで破断が始まることもあります。鋼材のような明瞭な降伏後の大きな伸びを一般に期待するものではなく、脆性的な破壊です。木材の繊維方向が引張りに強いことと、破壊前によく伸びて粘ることは別です。
周辺知識
木材の性質は方向によって異なります。これを異方性といいます。幹に沿う繊維方向には、長く連続した細胞が力を伝えやすい一方、繊維に直交して引き離す方向は弱くなります。また、木目に沿うせん断や、繊維方向の圧縮・引張りでも、それぞれ別の強度を用います。一つの「木材の強さ」だけで全部の方向を設計することはできません。
木造接合部では、ボルトや金物が十分に強くても、木材側のめり込みや割裂が先に問題になる場合があります。めり込みをある程度利用し、接合金物が曲がりながら粘る破壊を意図することもありますが、突然の割裂は避ける必要があります。そのため端距離、縁距離、ボルト間隔などを確保します。
水分量、節、繊維の傾き、腐朽なども性質へ影響します。特に長く荷重が続く場合は変形が時間とともに増すため、短時間の強度試験だけでは日常の変形を説明できません。材料の方向性、壊れ方、荷重の継続時間を合わせて考えることが、木造構造を理解する基本です。