学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅳ(構造) 問20
問題・正答・学習用解説
問題
杭基礎等に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(3)
正答の考え方
杭先端地盤の許容応力度の順序が逆です。同じ先端地盤の条件で一般的な算定を比較すると、打込み杭が最も大きく、次にセメントミルク工法の埋込み杭、場所打ちコンクリート杭の順に小さくなります。
杭は先端で地盤を押す抵抗と、側面に沿う摩擦抵抗で荷重を支えます。先端の長期許容応力度の一般式は、先端付近の平均値をとして、打込み杭が、セメントミルク工法が、場所打ち杭がです。共通のを除けばとなります。
打込み杭は地盤を押し分けて入れるため、先端周辺を締める効果があります。掘削して施工する杭では、掘削に伴う地盤の緩みや先端処理の状態などを考慮した評価になります。ただし、これは代表的な工法を同じ条件で比較した扱いです。個別の認定工法、拡底形状、載荷試験などで確認した性能まで、名称だけで一律に順位付けするものではありません。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)大地震後も使い続けたい重要建築物では、上部構造が倒れないことだけでなく、基礎の大きな残留沈下や傾斜を避ける必要があります。液状化や地盤の横移動が生じると、杭へ上部の慣性力とは別の曲げが加わります。そのため、法令の基本的な確認に加え、終局時の地盤・杭の変形や損傷を想定する検討を行うことは適切です。目標とする継続使用性に合わせて、何をどこまで許すかを設定します。
選択肢2
(2)群杭は複数の杭を近接させて一つの基礎として使うものです。1本あたりの荷重が同じでも、杭から地盤へ広がる応力の範囲が重なるため、周囲や下方の地盤が集団として大きく変形し、単杭より沈下が大きくなりやすくなります。これは杭のコンクリートや鋼材だけが縮む話ではなく、地盤との相互作用です。杭を増やせば沈下が本数に反比例して減るという単純な計算にはなりません。
選択肢3
(3)一般的な先端許容応力度の係数は、打込み300、セメントミルク200、場所打ち150で、記述の大小関係は逆です。たとえば平均値が30なら長期の先端許容応力度は、それぞれ3000、2000、となります。これは単位面積あたりの値なので、杭1本の先端支持力にするには先端面積を掛けます。場所打ち杭を大径にして支持力が大きくなることと、同じ地盤の単位面積あたりの評価の大小を混同しないようにします。
選択肢4
(4)砂質地盤における極限周面抵抗力度は、一般に打込み杭より場所打ちコンクリート杭の方を大きく評価する関係で適切です。先端抵抗の大小と同じ順序になるとは限りません。周面抵抗では、杭と砂が接する表面の粗さやかみ合い、施工による周辺地盤の状態が重要です。現地で固まるコンクリート杭の粗い表面は、砂との抵抗を発揮しやすい条件になります。先端と周面で抵抗の仕組みを分けて理解します。
周辺知識
杭の鉛直支持力は、概念的には「」と「」の和です。先端抵抗力度の単位は、面積はなので、掛けると力のになります。周面積は、円形杭なら周長に、その地層に接する長さを掛けたものです。杭径を2倍にすると先端面積は4倍、同じ長さの周面積は2倍となり、二つの抵抗は同じ比率では増えません。
また、極限支持力は抵抗の限界、許容支持力は所定の安全性を見込んだ設計上の値です。十分な支持力があっても、使用上問題になる沈下を生じる場合があるため、強さの確認と沈下の確認を分けます。
群杭では地盤の応力が重なることに加え、杭の配置によって水平抵抗にも相互作用が生じます。地震時に液状化する層では、平常時の周面抵抗をそのまま期待できません。杭材、先端地盤、周辺地盤、杭同士の影響を一つの系として考えることが、工法名や杭本数だけで判断しないための基本です。