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学科Ⅳ(構造)

一級建築士 令和5年度 学科Ⅳ(構造) 問18

問題・正答・学習用解説

問題

図-1~図-3は、鉄骨造のX形筋かい構面及びラーメン構面における、水平方向の荷重-変形関係を示した模式図である。これに関するイ~ニの記述の組合せのうち、最も適当なものは、次のうちどれか。ただし、水平荷重をQ\displaystyle Q、水平変形をδ\displaystyle \deltaとし、強度Qa\displaystyle Q_aはいずれも同じ値とする。また、部材の接合部は十分な剛性・強度を有するものとし、破線は、変形が増加したときの実線の履歴ループに続くループを示す。

図と記述

図-1~図-3 筋かい構面及びラーメン構面の荷重-変形関係イ.図-1は細長比の小さい筋かい構面、図-2は細長比の大きい筋かい構面、図-3はラーメン構面の荷重-変形関係をそれぞれ示している。ロ.図-1は細長比の大きい筋かい構面、図-2は細長比の小さい筋かい構面、図-3はラーメン構面の荷重-変形関係をそれぞれ示している。ハ.筋かいは、一般に、引張側において降伏耐力を発揮する。ニ.細長比の大きい筋かいは、一般に、引張・圧縮の両側において降伏耐力を発揮する。

選択肢

  1. (1)
    イとハ
  2. (2)
    イとニ
  3. (3)
    ロとハ
  4. (4)
    ロとニ

「2020年版 建築物の構造関係技術基準解説書」(一般財団法人建築行政情報センター/一般財団法人日本建築防災協会編集、令和2年10月26日発行)363頁 図6.3-4(一部改変)

正答と解説

正答:(3)

正答の考え方

正しい組合せはロとハです。図の縦軸Q\displaystyle Qは水平力、横軸δ\displaystyle \deltaは水平変形で、右へ押してから左へ押し戻す繰返しの経路が描かれています。図1は中央付近で力が小さいまま変形が進む、くびれた履歴です。これは圧縮で座屈しやすい、細長比の大きい筋かい構面に対応します。
細長比は部材の座屈しやすさの目安で、長く細いほど大きくなります。細長い筋かいは引張りでは降伏耐力を発揮できますが、圧縮ではそれより小さい力で曲がってしまいます。一度曲がった筋かいを逆向きに引くと、まず曲がりが伸ばされるため、小さい力で変形が進む範囲が生じます。
図2は圧縮側にも比較的大きな抵抗を持つ細長比の小さい筋かい、図3は柱・梁の曲げによって抵抗するラーメンの、ふくらみの大きい履歴です。したがって対応を述べるロが正しく、引張側で降伏耐力を発揮するハも正しい記述です。細長い筋かいが圧縮側でも同じように降伏耐力を発揮するとするニは、座屈を無視しています。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)ハの「引張側で降伏耐力を発揮する」は適切ですが、イは図1と図2の対応が逆です。図1の中央の細い部分は、圧縮で座屈した筋かいが荷重反転後に伸ばされる間、抵抗が小さくなることを表します。これは細長比の大きい筋かいの特徴です。強度Qa\displaystyle Q_aが同じでも、その値に達する途中や反転後の抵抗は違います。最大の縦軸の値だけを見て、二つの筋かいを同じ性能と判断しないようにします。

選択肢2

(2)イもニも不適切です。イは細長い筋かいと太く短い筋かいの履歴の対応を逆にしています。ニは、細長い筋かいが圧縮でも材料の降伏まで十分な力を発揮できるとしていますが、実際には全体座屈が先行しやすくなります。引っ張った細い棒はまっすぐ力を支えられても、押すと横へ曲がるという違いです。引張りと圧縮を同じ材料強度だけで比較することはできません。

選択肢3

(3)ロは、図1の細い履歴を細長比の大きい筋かい、図2を細長比の小さい筋かい、図3をラーメンに対応させており適切です。ハも、接合部の強度が十分という条件で、筋かいが引張側に降伏耐力を発揮するため適切です。X形の筋かいでは、水平力が反転すると引張りを受ける斜材が入れ替わります。このため構面全体の図は正負両側に描かれますが、一本の細長い筋かいが圧縮でも同等に抵抗する意味ではありません。

選択肢4

(4)ロは正しいものの、ニの圧縮側の扱いが誤りです。X形の構面が左右どちらの荷重にも抵抗できるのは、反対向きの筋かいが引張りを負担するからであり、各筋かいが引張り・圧縮の両方で同じ降伏耐力を保つからではありません。圧縮でも安定した降伏を利用する座屈拘束ブレースなどは、座屈を抑える別の仕組みを持っています。本問の通常の細長い筋かいに、その性能を当てはめることはできません。

周辺知識

荷重と変形の関係を繰り返し描いたものを履歴曲線と呼びます。弾性だけなら、力を増やして変形し、力を除くと同じ直線を戻るため、囲む面積はほぼ0です。塑性変形などで行きと帰りの経路がずれると、輪のような面積が生まれます。この面積は、一往復で構造が吸収したエネルギーに対応します。
力をkN\displaystyle \mathrm{kN}、変形をm\displaystyle \mathrm{m}で表せば、面積の単位はkN⋅m\displaystyle \mathrm{kN\cdot m}です。各図の最大強度Qa\displaystyle Q_aが同じでも、同じ変形幅でふくらみの大きい履歴の方が、一般に多くのエネルギーを吸収できます。図1のように中央がくびれると、力の小さい区間が広く、面積が小さくなります。
ただし、履歴の面積だけで建物全体の安全性は決まりません。変形を大きくした次のサイクルで耐力が落ちるか、接合部が壊れないか、柱が鉛直荷重を支え続けるかも重要です。破線は次に大きな変形へ進んだ場合の経路であり、一つの閉じた輪だけでなく、変形が増えた際の変化も読む必要があります。