学科Ⅴ(施工)
一級建築士 令和5年度 学科Ⅴ(施工) 問17
問題・正答・学習用解説
問題
左官工事、タイル工事及び張り石工事に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
最も不適当なのは選択肢1です。アルミニウム合金製建具の枠まわりへ充填するモルタルに、塩化カルシウム系の凍結防止剤を加えることは適切ではありません。塩化物は鉄筋や金属部材の腐食を促すおそれがあり、凍結を防ぐ目的でも、周囲の材料を傷める方法を選んではいけません。
モルタルは、セメント、水、砂を練り混ぜた材料です。まだ十分に固まっていない時期に内部の水が凍ると、膨張によって組織が壊れ、強度や付着が低下することがあります。これが初期凍害です。対策として必要なのは、材料や施工環境の温度を整え、保温養生などにより適切に硬化させることです。
一方、枠まわりではモルタルがアルミニウムに接し、建物には鉄筋もあります。塩化物を含む材料を入れると、凍結とは別の劣化原因を持ち込むことになります。「凍らなければよい」ではなく、硬化後も長く周囲の材料と安全に共存できることを確認します。他の選択肢は、下地の吸水、タイルの位置、石材の固定という各工事の条件に適した対応です。
各選択肢の解説
選択肢1
選択肢1:不適当なのは塩化カルシウム系の凍結防止剤を加えた点です。初期凍害を避けることは必要ですが、そのために塩化物による金属腐食の危険を持ち込んではいけません。アルミニウム建具の枠まわりという、金属と直接接する用途にも注意します。寒冷時は材料の加温や施工箇所の保温、適切な養生などで硬化する条件を確保します。身近な道路の凍結防止と同じ感覚で、建築用モルタルに塩類を加えればよいと考えないことが、この選択肢の判断のポイントです。
選択肢2
選択肢2:吸水調整材は、下地が塗り付けたモルタルから急激に水を吸い取ることを抑える材料です。先に塗った吸水調整材が乾燥してから下塗りを行う本肢の手順は適当です。モルタル中の水が急に失われると、セメントの反応や下地との付着が不十分になるおそれがあります。吸水調整材は、水で下地を濡らす作業と同じではなく、所定の状態に乾燥させて機能させる材料です。材料ごとの塗布量や乾燥条件を守り、その上に施工するモルタルとの組合せを確認します。
選択肢3
選択肢3:密着張りでは、下地に張付けモルタルを塗り、タイルを振動などで密着させて張ります。壁の上部から下部へ進め、一段置きに数段張った後に間を埋める方法は適当です。先に張った列を基準にして、目地幅や面の通りを調整しながら施工できます。タイル工法は、モルタルをどこへ塗るか、どのように押し付けるかなどで施工順序が異なります。別の張り方の「下から上へ」という記憶をそのまま当てはめず、本肢が密着張りであることを確認します。
選択肢4
選択肢4:外壁の乾式石張りは、主に金物で石を支持する方法です。一次ファスナーは躯体側に取り付ける金物で、あと施工アンカーによってコンクリートへ固定します。その取付け位置に合わせてアンカーを設置する本肢の対応は適当です。石材の重さや風などの力が、石から金物、アンカー、躯体へ伝わる経路をつくります。見付けの位置だけでなく、アンカーの埋込み、縁からの距離、下地の状態などを所定の仕様に従って確認し、必要な支持性能を確保します。
周辺知識
仕上工事では、仕上材だけでなく、その下にある材料との相性が品質を左右します。モルタルが丈夫でも下地から剥がれれば仕上げとして機能せず、凍結を防げても金属を腐食させれば建物の耐久性を損ないます。「一つの性能を改善した結果、別の不具合を起こさないか」という視点が必要です。
モルタルの硬化には水と温度が関係します。凍結すれば内部組織を壊し、下地に急に吸水されれば水和や付着を妨げます。寒さには保温、急な吸水には吸水調整というように、原因を特定して対策を選びます。材料名の「防止剤」だけで安全と判断せず、用途と接する材料も確認します。
タイル張りと乾式石張りでは、下地へ力を伝える方法も違います。タイルはモルタルなどの接着によって面で付着し、乾式石張りは金物やアンカーを介して支持します。前者では下地処理や密着状態、後者では金物の位置と定着が重要になります。仕上材から躯体へ力がどう伝わるかを追うと、各工事の検査項目が理解しやすくなります。