学科Ⅳ(構造)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅳ(構造) 問23
問題・正答・学習用解説
問題
各種建築構造に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(1)
正答の考え方
SRC柱の短期せん断を、鉄骨部分とRC部分の許容せん断力の合計だけで確認する記述が不適切です。SRCは、鉄骨の周囲に鉄筋を配置してコンクリートを打ち、複数の材料を一体として使う構造です。せん断力は柱を横にずらして切ろうとする力で、それぞれの部分が分担して抵抗します。
短期荷重時の柱の検討では、鉄骨部分とRC部分について、各部分の設計用せん断力に対し各部分の許容せん断力が不足しないことを確認します。合計に余裕があっても、一方の負担に対してその部分の抵抗が不足していれば適切とはいえません。たとえば分担が鉄骨60、RC40という力の状態で、各許容値が50と70なら、合計120は作用する100を上回りますが、鉄骨側の60を50では受けられません。この数値は考え方を示す例です。
SRCでは力の種類、柱・梁・接合部、長期・短期などで評価方法が異なります。軸力や曲げの累加の考え方を、柱の短期せん断へそのまま移してはいけません。材料の強さを足す前に、実際の力の分担と、検討する部位に対応した方法を確認することが重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)柱の短期せん断では、鉄骨とRCに分担させた設計用せん断力を、それぞれの部分の許容せん断力以下とする必要があります。合計だけを見ると、一方の部分の不足が他方の余裕に隠れるおそれがあります。余った耐力が、設計上の力の分担と無関係に自由に移ると仮定することはできません。SRCの全ての検討で累加が使えないという意味ではなく、この部位・荷重状態で必要な個別の確認を省略したことが誤りです。
選択肢2
(2)梁の鉄骨ウェブは、上下のフランジをつなぐ板部分です。柱梁接合部で柱の帯筋を連続させるため、所定の納まりによりウェブに孔を設け、帯筋を通して配筋することができます。帯筋は柱の主筋を囲み、せん断への抵抗やコンクリートの拘束に役立ちます。ただし必要な鉄骨断面を無計画に切り欠いてよいわけではありません。貫通孔の大きさ・配置、ウェブの性能、配筋とコンクリート充填の施工性を合わせて計画します。
選択肢3
(3)壁式RCは、柱梁の骨組だけでなく、配置した壁と床によって荷重を支える構造です。十分な壁量により大きな水平耐力と剛性を確保しやすい一方、ラーメンの梁端などへ塑性変形を分散させる構造のような大きな靱性は一般に期待しません。したがって高い強度と、優れた塑性変形能力とを区別した適切な記述です。靱性を大きく見込まないからこそ、壁量、壁の配置、開口や接合部などの条件が重要になります。
選択肢4
(4)階高が大きくなると壁の変形や応力状態が変わり、通常の仕様の前提から外れます。その場合、層間変形角の制限と保有水平耐力の確保を構造計算で確かめる扱いです。層間変形角は上下の床の水平ずれを階高で割った量で、保有水平耐力は建物が最終的に発揮できる水平力への抵抗です。単に厚い壁を使えばよいのではなく、変形と耐力の両面から、規定の範囲を超える計画の安全性を確認します。
周辺知識
構造形式は、どの部材で力を受けるかという設計の仕組みです。ラーメンは柱と梁を曲げに抵抗できるよう接合した骨組で、壁式は主に壁と床を組み合わせて支えます。SRCは部材の材料の組合せを表す名称であり、ラーメンや壁式という全体の抵抗形式とは分類の視点が異なります。
複合部材では、各材料の力の分担と、それらの間で力を伝達する仕組みが必要です。鉄骨が強くても、周囲のRC部分に想定以上の力が作用すれば、その部分の損傷が先に進む可能性があります。部材全体の合計値だけでなく、各部分や接合部の照査が必要になる理由です。
耐震性には、壊れるまでの力の大きさを表す強度と、力を保ちながら変形できる靱性があります。強度を大きく確保する設計と、変形を許容してエネルギーを吸収する設計では、重視する条件が異なります。選んだ構造形式の得意な働きを理解し、それに合った計算と構造詳細で性能を確保する必要があります。