学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅰ(計画) 問6
問題・正答・学習用解説
問題
建築物の環境振動及び光環境に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(4)
正答の考え方
正解は(4)です。タスク・アンビエント照明では、手元の作業に必要な明るさをタスク照明で確保し、室全体のアンビエント照明を控えめにします。一般に、タスク側の照度を周囲より高く設定するため、設問の大小関係は逆です。タスクは作業、アンビエントは周囲の環境を意味します。照度は、ある面へどれだけ光が届くかを表し、単位はlxです。
例えば、一人が机上で細かい文字を読む場合、部屋全体を机上と同じ高い照度にするより、机を手元灯で照らし、周囲は移動や会話に必要な明るさにする方が、不要な照明を減らせます。ただし、周囲を真っ暗にすればよいわけではありません。明るい紙と暗い周囲を交互に見ると目への負担が増すため、明暗の釣合いやまぶしさも検討します。均斉度を確保するという肢3と、省エネルギー化する肢4は矛盾せず、作業面と周囲の役割を分けたうえで、急な明暗差を避けることが重要です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。建物の揺れは高さだけで決まらず、重さ、曲がりにくさ、形、振動を減らす性質などが関係します。アスペクト比は高さを幅で割った値で、大きいほど細長い形です。細長く軽い構造では、風などの外力による揺れが問題となる場合があります。低い建物でも、軽量で柔らかい床や塔状の部分があれば検討が必要です。「高層建物だけが振動する」と考えず、人が感じる揺れと構造安全性をそれぞれ確かめます。
選択肢2
(2)適当です。固体伝搬音は、床や壁などの固体を伝わる振動が、別の場所で空気中の音になる現象です。スラブは床をつくる板状の構造部分で、支点間の距離であるスパンを短くし、厚さを増すと、一般に曲がりにくくなります。そのため床の振動を抑える対策になります。ただし音源の種類や振動数、支持条件でも効果は変わります。音源の防振や伝達経路の分離も併せて考え、床を厚くすれば全ての騒音が解決するとは判断しません。
選択肢3
(3)適当です。均斉度は、対象とする面の明るさがどれだけそろっているかを表し、照度では最小照度と平均照度の比などを用います。最も暗い場所が平均に比べて極端に暗いと、均斉度は低くなります。机の中央だけ明るく端の資料が暗いような状態では、読む場所を変えるたび見やすさが変わります。作業領域では大きなむらを避け、影やまぶしさも確認します。平均照度の数字だけを高くしても、均等で見やすい照明になるとは限りません。
選択肢4
(4)不適当です。作業を照らすタスク照明を低くするのではなく、作業面に必要な照度を確保し、周囲のアンビエント照明を適度に抑えます。例えば、机ごとに点灯を選べる手元灯があれば、人がいない机まで高照度にする必要を減らせます。ただし周囲には、安全な移動や顔の見え方に必要な光が残るようにします。局所と全体の照明を分けて無駄を減らす方式であり、必要な視作業の明るさを犠牲にする方式ではありません。
周辺知識
環境振動と照明に共通するのは、安全に壊れないことや平均的な数値だけでは、快適さを十分に判断できない点です。建物は構造上安全でも、人が風によるゆっくりした揺れを不快に感じることがあります。照明も、平均照度が足りていても、強い影やまぶしさがあれば細かい作業をしにくくなります。
振動では、外から加わる力と建物が揺れやすい周期の関係を考えます。揺すられる周期が構造の固有周期に近いと応答が大きくなる場合があり、これを共振といいます。部材を厚くしたり支点間を短くしたりすると剛性が増し、振動特性も変わります。剛性は、力を受けたときの変形しにくさです。
照明では、照度と輝度を分けることも大切です。照度は面に入る光の量、輝度はその面や光源がある方向からどれだけ明るく見えるかに関係します。同じ照度でも、光沢のある机では光源が映り込む場合があります。数値を一つだけ覚えるのでなく、人がどこで何を見て、どんな刺激を受けるかに戻って計画します。