学科Ⅰ(計画)
一級建築士 令和4年度 学科Ⅰ(計画) 問4
問題・正答・学習用解説
問題
特定の用途に供する建築物に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。選択肢
正答と解説
正答:(2)
正答の考え方
正解は(2)です。閉架式書庫は、通常、職員が資料を取り出し、利用者には窓口などを通して提供する書庫です。一般の来館者が自由に入って本を選ぶ場所ではありません。したがって、来館者が気軽に本や雑誌を手に取るブラウジングコーナーや、調べ物の相談をするレファレンスコーナーを閉架式書庫内に設ける計画は不適当です。
ブラウジングは、目的の本を一冊だけ探すのでなく、内容を眺めながら関心を広げる使い方です。レファレンスは、職員が資料や情報の探し方を支援するサービスです。例えば「地域の昔の地形を調べたい」という相談に、地図や郷土資料を紹介します。どちらも来館者が利用しやすい区域に必要です。書庫が静かであることだけを理由に置くと、立入り制限と矛盾してしまいます。他の選択肢は、収蔵品への急な環境変化、給食室の水分による汚染、危険物の爆発圧力という、それぞれの用途に特有の危険を抑える計画です。
各選択肢の解説
選択肢1
(1)適当です。収蔵品によって適した湿度が異なるため、一般収蔵庫に加え、低湿・高湿の収蔵庫を分ける考え方があります。例えば湿気でさびやすい金属と、乾燥で変形しやすい有機材料を同じ条件で扱うのは適切とは限りません。ならし室は、環境の異なる場所の間で温湿度の変化を緩やかにする前室です。急な移動による結露や伸縮の負担を抑えます。実際の設定は材質や保存状態に応じて決め、全資料に同じ高湿条件を与える意味ではありません。
選択肢2
(2)不適当です。閉架式書庫は、資料の保存や管理を優先し、通常は職員が出納する区域です。ブラウジングは自由に眺めて選ぶ行為、レファレンスは調べ物の相談であり、利用者が到達しやすい場所に設けます。「本に関係する機能だから全部書庫へ集める」と考えると、入れる人の違いを見落とします。開架区域の閲覧席、相談窓口、静かな学習席などを、会話の有無や使い方に合わせて配置する必要があります。
選択肢3
(3)適当です。給食室のドライシステムは、調理中も床が乾いた状態を保つよう、排水や作業方法を計画するものです。床がいつも濡れていると細菌の増殖に適した環境になりやすく、水はねで汚れが食品や器具へ移るおそれもあります。水を床へ流し続ける代わりに、器具や排水口で適切に受けます。水を全く使わない調理や、清掃を省く方式ではありません。汚染を広げず、洗浄後も乾きやすい設備と運用を組み合わせます。
選択肢4
(4)適当です。危険物が爆発すると、短時間に内部の圧力が高まります。軽い不燃の屋根とし天井を設けないのは、その圧力を上方へ逃がし、側方の壁などが壊れて周囲へ被害を及ぼすのを抑える考え方です。不燃性は燃えにくさ、軽量性は圧力を逃がす構成に関係し、別の役割を持ちます。実際には危険物の種類や施設の基準に応じて計画するもので、普通の建物も屋根を軽くすれば爆発に安全という意味ではありません。
周辺知識
用途の異なる建物を計画するときは、「誰、または何を守るのか」を最初に考えると、部屋の配置や設備の理由が見えてきます。図書館では利用者の活動と資料の保存を両立させるため、自由に入れる区域と職員が管理する区域を区別します。静かさだけでなく、相談する行為が可能か、資料を取り出す手順は何かが重要です。
博物館では、収蔵品を守るために、人が快適な環境と資料に適した環境が異なる場合があります。前室は単なる余分な部屋ではなく、異なる環境を直接つながない緩衝部分です。給食室も同様に、汚染側と清潔側を分け、物や人の移動で汚れを持ち込まないことが大切です。床が乾くだけで全ての衛生管理が完成するわけではありません。
危険物貯蔵庫では、日常の使いやすさに加え、事故時に力や煙がどちらへ流れるかを考えます。このように、利用の流れ、空気や水の流れ、事故時の力の流れをたどると、設備の名前を暗記するだけでなく、その計画が必要な理由を説明できます。