資格ナビ一級建築士の演習へ

学科Ⅱ(環境・設備)

一級建築士 令和4年度 学科Ⅱ(環境・設備) 問1

問題・正答・学習用解説

問題

環境工学に関する次の記述のうち、最も不適当なものはどれか。

選択肢

  1. (1)
    日照図表は、周辺の建築物によって対象点への直射日光が遮られるかどうかを検討するものであり、緯度ごと、また、冬至の日などの季日ごとに描かれる。
  2. (2)
    外皮平均熱貫流率(UA\displaystyle U_{A}値)は、断熱性能を示す指数で、建築物の内部から屋根や壁、床、開口部等を通過して外部へ逃げる「単位温度差当たりの外皮総熱損失量」を「外皮総面積」で除した値である。
  3. (3)
    ブーミング現象は、低い周波数領域になるほど、また、室の寸法が小さいほど、固有周波数密度が疎になるので起こりやすい。
  4. (4)
    空気寿命が一定の条件では、空気齢が小さいほど、室内のある点で発生した汚染質が排気口に至るまでの時間は短くなる。

正答と解説

正答:(4)

正答の考え方

正解は(4)です。空気齢は、外から取り入れた空気が、室内のある点へ到達するまでに経過した時間です。空気余命は、その点から排気口へ出るまでに残された時間、空気寿命は給気から排気までの全時間を表します。したがって、次の関係になります。
空気寿命=空気齢+空気余命\begin{aligned}\text{空気寿命}&=\text{空気齢}\\[4pt]&\quad+\text{空気余命}\end{aligned}
本問は空気寿命を一定にしています。全体の時間が決まっているなら、その点までの経過時間が短いほど、排気までの残り時間は長くなります。「空気齢が小さいほど排気口までの時間が短い」という本肢は逆です。例えば寿命が10分で一定なら、空気齢2分の点では余命8分、空気齢7分の点では余命3分です。
新しい空気がすぐ届く点と、そこで生じた汚染質がすぐ外へ出る点は、同じ意味ではありません。給気口に近い場所では新鮮な空気を得やすくても、そこから排気口まで長い経路を通る場合があります。空気の新しさを評価する量と、汚染質の排出の速さを評価する量を分け、さらに本問の「寿命一定」という条件を使うことが解答の要所です。

各選択肢の解説

選択肢1

(1)適当です。日照図表は、ある点から見た太陽の方向と、周囲の建物などが占める方向を比較して、直射日光が届くかを調べるものです。太陽の経路は緯度と季節で変わるので、対象地点や検討日へ合った図表が必要です。冬至は太陽が低く日照時間が短いため、日影を考える重要な時点になります。部屋が明るいかを示す一般的な採光の評価と、直射日光が遮られるかの検討は区別します。

選択肢2

(2)適当です。UA値は、屋根、壁、床、窓などを通る熱損失を、内外の温度差1℃当たりに直し、外皮全体の面積で割ったものです。単位はW/(m2⋅K)\displaystyle \mathrm{W/(m^2\cdot K)}で、値が小さいほど熱が逃げにくく断熱性能が高いと判断します。床面積で割る指標ではありません。窓の性能が低いと壁をよく断熱しても全体へ影響するため、各部の熱損失を面積と合わせて足すことが重要です。

選択肢3

(3)適当です。部屋には、寸法に応じて特定の周波数の音が響きやすい固有振動があります。小さな室の低音域では、その周波数がまばらに存在するため、ある音だけが突出して響き、ブーンとこもるブーミングが起こりやすくなります。大きな室や高い周波数域では多くの固有振動が密に重なります。単に低音の音量が大きい現象ではなく、部屋の寸法と共鳴の分布が音を強調する仕組みです。

選択肢4

(4)不適当です。空気寿命を一定にすると、空気齢が小さい分だけ空気余命は大きくなります。寿命10分、空気齢2分なら排気まで8分、空気齢6分なら排気まで4分です。若い空気がある場所で汚染質を発生させても、それが直ちに排気口へ出るとは限りません。「空気齢が小さい=換気の全ての性質が優れている」と一般化せず、給気からの到達と排気への到達を分けて評価します。

周辺知識

換気の性能は、1時間に何m3\displaystyle \mathrm{m^3}の空気を入れ替えたかという総量だけでは分かりません。給気した空気がすぐ近くの排気口へ抜ける短絡があれば、部屋の奥には古い空気が残ることがあります。そこで、どの位置へどれくらい新しい空気が届くかを空気齢で調べ、汚染質をどれくらい速く排出できるかを別の尺度で考えます。
空気寿命、空気齢、空気余命は、駅から目的地までの移動で、全所要時間、途中までの経過時間、残り時間を分ける考え方に似ています。ただし、室内の空気は一本の道を進む粒だけでなく、混ざりながらさまざまな経路を通るため、実際には平均的な時間として評価します。
設計では給気口と排気口の位置、家具、間仕切り、人体の発熱による上昇流などが空気の流れを変えます。空気齢を小さくしたい場所が、人の呼吸する高さであることも重要です。総換気量を確保したうえで、その空気が必要な場所へ届くか、汚染源から出たものを適切に排出できるかを確かめると、換気計画の目的が具体的になります。