単相変圧器の一次側に電流計,電圧計及び電力計を接続して,短絡試験を行う。二次側を短絡し,一次側に定格周波数の電圧を供給し,電流計が 30 A を示すように一次側の電圧を調整したところ,電圧計は 150 V,電力計は 1350 W を示した。この変圧器の一次側からみた漏れリアクタンスの値[Ω]として,最も近いものを次の(1)〜(5)のうちから一つ選べ。ただし,変圧器の励磁回路のインピーダンスは無視し,電流計,電圧計及び電力計は理想的な計器であるものとする。
1.50 Ω は等価抵抗 R=I2P=9001350 の値そのものです。問われているのは漏れリアクタンス X なので,X=Z2−R2≃4.77Ω まで計算する必要があり,R を答えてはいけません。
選択肢2
3.50 Ω は R や Z の値を取り違える,あるいは Z−R=5−1.5=3.5 と引き算してしまうなどした誤りです。リアクタンスは差ではなく三平方 Z2−R2 で求めます。
選択肢4
5.00 Ω はインピーダンスの大きさ Z=IV=30150 の値です。Z は抵抗分とリアクタンス分の合成であり,リアクタンス X 単独の値ではないため誤りです。
選択肢5
5.22 Ω は Z と R の二乗の差の取り方を誤る(たとえば Z2+R2=25+2.25≃5.22 と足してしまう)ことで生じる近い値です。正しくは差をとり X=25−2.25≃4.77Ω です。
周辺知識
変圧器の特性は二つの試験で把握します。無負荷試験(開放試験)は定格電圧を加えて励磁電流と無負荷損(≒鉄損)を測り,励磁アドミタンス(鉄損コンダクタンス・励磁サセプタンス)を求めます。短絡試験(インピーダンス試験)は二次短絡で定格電流を流し,必要な電圧(インピーダンス電圧,定格の数%)と入力電力(≒全負荷銅損)を測り,巻線抵抗 R と漏れリアクタンス X を分離します。短絡試験では加える電圧が小さいので鉄損(電圧二乗に比例)が無視でき,電力計の指示はほぼ銅損になる,という点が R=I2P を使える根拠です。求めた Z,R,X から,インピーダンス電圧(%インピーダンス %Z)や,負荷時の電圧変動率 ε≒p·cosθ+q·sinθ(p:%抵抗降下,q:%リアクタンス降下)が計算でき,さらに短絡電流=%Z定格電流×100 の見積りにも使われます。本問の引っかけは『電力計指示=銅損(抵抗分)であって全インピーダンスではない』点と,『求めるのは X であって Z でも R でもない』点で,Z(5 Ω)と R(1.5 Ω)の三平方の差から X を出す,という最後の一手を忘れないことが重要です。インピーダンス三角形(Z を斜辺,R を底辺,X を高さ)をイメージすると関係を取り違えにくくなります。